『ファインダー越しの光』


とても暑い夏の日。
僕はそこで、立ち尽くしていた。
目の前に広がる綺麗な水面。反射する光。
もう言葉なんて浮かばなくて、ただ見惚れた。
ジリジリ照り付ける太陽が、目の前を真っ白にする。
ここで寝転んだら、どんなに気持ちが良いだろう。


でもそんな事は出来なくて、
当たり前のようにこの場所で遊ぶ親子に温かいものを感じた。
水辺にしゃがみこみ、水面を見つめる。
視線を上げれば、果てしなく続く水平線。
足元には小さい蟹が何匹も居て、行動を追ってしまう。


何十分そこに居たかはわからない。
けど、近寄ってくる人は不思議な顔をして通り過ぎる。
こんなに清清しい場所なのに、どうして立ち止まらないんだろう。

暑さはさらに増していたけど、そこから離れる気はなかなかなれなかった。
誰にも邪魔されずに、何も考えない時間。
時間がびっくりするくらいゆっくり流れて、一日が充実する。


写真を撮ってみたけれど、あまりの日差しにファインダーがのぞけない。
真っ白くて、何がなんだかわからないのだ。


後で見た写真には、確かにその風景が映し出されていたけれど、
あの暑さや、清清しさ、空気感までは感じ取れないのだ。